白い夏と緑の自転車赤い髪と黒いギター
KICM-1054 / ¥800(tax in)
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- そんな風にすごしたい
薄っぺらな関係でも、とりあえず世間とコミュニケーションをとるべきならば、山中さわおは間違いなく“ダメ人間”だったろう。 Please Mr. Lostmanをリリースした頃、ストレンジカメレオンという孤高色の強い代表曲ゆえにか、彼には他者を受け付けない孤独と貴高さを印象づける何かがあった。それ以降、確実にリリースごとに売り上げを伸ばし、前回のツアーでAXとブリッツを即完させるに至っては、彼に対する表面的見え方に変化が起こった。絶望から希望へ、孤独から共有へ、彼らのずば抜けたポップセンスも手伝って、やはりその見え方の変化が現在の状況の良さをつくってきたのも間違いない。今回の楽曲、一聴した感じでは久々のダメぶり発揮か?というイメージである。孤独感の中、一人うじうじとその言い訳に思いを巡らす。心に痛く、その分心に染みる、そんな印象が先に立つ楽曲である。ただ、本質、というかフルできっちり聴き終えた時にその印象は取って代わる。そこには彼らのものすごい強い意志表示が残る。
山中の北海道での青年期をモチーフにした楽曲で、そこにはコミュニケーションの欠如、孤独を自分の中で消化できず、純粋と妥協のはざまで揺れる心の動きがみてとれる。しかし間奏あけのワンフレーズ、そこで彼らの現在の覚悟が現れる。真剣さや純粋さ、それゆえに世間との関係との折り合いをつけられない、それでもそこから逃げなかった者だけが得られる希望をつかんだのである。沈んだ顔で眺めていたあの頃の虹を強い意志をもってみつめられる自分、人からみればみっともなくても、自分にとっては自然な事。世間からみればダメという烙印も、自分から逃げなかった人間の強い意志にはかなわないのだ。
山中の心遍歴の集大成、間違いなく名曲が生まれた。