Thank you, my twilight
KICS-1039 / ¥3,000(tax in)
- RAIN BRAIN
- ビスケットハンマー
- バビロン天使の詩
- My Beautiful Sun(Irene)
- Come on, ghost
- ROBOTMAN
- Ritalin 202
- 白い夏と緑の自転車 赤い髪と黒いギター(original egoistic version)
- ウィノナ
- Thank you, my twilight
- Rookie Jet
ふっきれたなっピロウズ!
多分サウンド感だったり、詩の世界観だったりで悩んでいた訳ではないだろうし、一歩一歩確実にステップを踏み大きくなりつづけているだけに、迷いを感じさせたこともない。
でも今回のアルバムを聴くと、先が無いという意味でも落ち着くという意味でもない“到達感”をすごく感じるサウンドはどこまでも楽しく、つんのめるくらい前進している。
陳腐かもしれないがこれぞ“ポップ“といえるアルバム。異ジャンルへのアプローチや目先の変わった世界観をうたうこともなく、こんなにも新鮮で音楽の楽しさを表現できるのは、彼らの類まれなポップセンスが本物である証拠だろう。
心のジレンマをダイレクトにぶつけ、聴くものに共感と希望を抱かせる詩世界は健在だが、小気味良く、楽しさを前面にだしたサウンド感とは別の到達感には、その詩世界の伝え方、伝わり方の変化もある。
体を揺らしながらアルバムを一曲一曲聴き進める。アルバムのトータル感や、単純に感傷を前面にだす楽曲が無い為か、楽しいとか、悲しいとか、切ないとか、そんな言葉の中間に位置するような“あの時一瞬感じた気持ち”がパッと浮かんでくる。
だから単にセンチメンタルになったりエモーショナルになったりではなく、感情移入ではない自分だけのオリジナルな気持ちが湧き上がるのである。共感が得られないのではない、その先の“だから自分は?”というところまで感じさせる力がこめられているのである。
山中は本来強い人間であると思う。だから自分の弱さや矛盾を堂々と表現するのだと思う。
そんな彼の強い部分、ある意味誤解されていた部分がこのアルバムからははっきり感じ取れる。聴く側に心のステップをもう一歩踏み出させる力、究極のポップアルバムの裏には確かな意思表示がある。
経歴の長いバンドに使われがちな“円熟”なんて言葉はいらない、常に新しくあり続けながら“到達”を感じざるを得ないパワーが今のピロウズにはある。