the pillows「ハッピー・バースデー」Special Interview

Kiyohiko Sasagawa(Interview File Cast)


笹川:
今年春、山中さんの初のソロツアー「Buzzy Roars Tour」以来となります。 そもそもあのツアーは、今年2月に発表したソロアルバム『破壊的イノベーション』を携えてのものだったわけですけど、あのソロツアーでの収穫を、山中さんは今、どう捉えているんでしょうか?
山中:
まあ、もともとは自分内で何かを起こそうと思って出したアルバムではないので――ピロウズのカンフル剤として、ピロウズのメンバーに対する“破壊的イノベーション”として出したアルバムだったので、自分自身に何が残るかと言われたら、「う~ん…」って感じかな。
むしろ…どっちかと言うと、寂しい感情の方が残ったかもしれない。
笹川:
ほぉ。ツアーに関して?
山中:
ええ。ツアーも、あと、アルバムの方も。結果に関してはね。
笹川:
結果と言うと…CDセールスやライヴの動員といった数字面で?
山中:
はい。 まあ、それがピロウズとソロとでは違うだろうと最初から思ってはいて――何となく想像では「ピロウズの半分くらい売れればいいな」と思っていたんです。
今回の『破壊的イノベーション』は、自分としてはピロウズのニューアルバムと同じレベルのエネルギーを注いで作ったものだったので、それくらい行くといいな、と思っていたわけ。
そしたら、フタを開けてみたら、CDのセールスもライヴでの動員数も、全然そこまで行かなかったんですよ。
そういう意味では、何か…「今までのピロウズって、純粋な音楽ファンじゃない人に支えられていたのかもな」と、シビアに見るとそう思ったし…わりと寂しい気持ちが残った感じでしたね。
まあ、そういう意味では、CDの方の結果が寂しかったかな。ライヴの動員は、内容以外にも、もう少しいろんな要素が加味されると思うので――自分がお客さんの立場で想像しても、やはりステージにいつも見慣れた4人が立っているのと、知らない顔が混じっていて普段体感したことのない曲をやられるというのでは、全くの別物と捉えられてもしょうがないわけでね。
ただ、その逆の捉え方もできるわけで――全国で何千人もの人たちが僕のツアーに来てくれたわけで、その人たちはおそらく、CDもほぼ全員買ってくれていて…要は、ものすごい密度の濃い人たちだと思うんです。
だから、そこに対しての感謝の気持ちと、何か…すごい喜びと信頼が芽生えたかな。
笹川:
よりコアなバスターズ=ピロウズ・ファンが確認できたし、彼らへの信頼もより強固になったツアーだったということですね。
山中:
そうです。
もちろん、来なかった人がそうじゃないって言うのは乱暴すぎると分かっているけれども――ソロツアーに来なかったり、『破壊的イノベーション』を買わなかった人たちを否定するのはちょっと大人気ないな、と頭では分かっているんだけれども…
ただ、そういう側面があるってことは間違いないかなっていう。まあ、人には事情があるので、来たくてもこれなかった人もいただろうし――お金のかかることだから、何でもかんでも買ったり行動できたりするわけでもないんでしょうけどね。
…あと、実はピロウズ自体の人気が落ちているってことの表れなのかもしれないし(笑)。
笹川:
(笑)まあ、でも、そのソロツアーは、今回、映像作品としてリリースされますし、改めてチェックする価値はあると思います。
特に、アンコールで『Fool on the planet』の弾き語りを披露している場面は、見ていてグッと来ちゃぃましたねぇ。01年リリースのピロウズ初のベストアルバムのタイトル曲であり、山中さわおという音楽家の姿勢を強く織り込んだ曲で――
「時代が望んでも流されて歌ったりしないぜ 全てが変わっても僕は変わらない」というフレーズを今また、ソロツアーという場で歌いあげたのは非常に意味の深いことだったのでは?
山中:
そうですね。うん、まさにそういう意味合いの選曲でした。
僕が何か変わってソロ活動をしているわけじゃない、僕以外が変わってソロ活動せざるを得なかったんだと――それが、ライヴの最後に大きい声で歌うには一番しっくりくるんだ、ってことかな。
笹川:
そんなソロワークを終え、9月16日にピロウズとしてのニューシングル『ハッピー・バースデー』がリリースされます。
ここまでのバンドの動きを整理しておくと――ピロウズがホームページで活動休止宣言を出したのが昨年の7月1日。そこから1年2カ月経ち、バンド名義では本当に久々のシングルとなるわけで――もともと山中さんのソロ活動自体、ちょっとマンネリ気味に感じ始めた他メンバーへの強烈なカウンターパンチだったわけですが――そもそも今回の新曲のレコーディングはいつ頃やったものなんでしょうか?
山中:
えーっと、ソロのツアーを終えた後…、確か、1週間後くらいでしたね。
笹川:
となると、今年6月の話か。で、久々に会ったメンバーとの手応えはどんな感じだったの?
山中:
人的なもので言えば、感慨とかは何にもなくて。久しぶり感はゼロ%でしたけどね(笑)。
笹川:
でも、結構、久しぶりではありますよね? バンドで動くのは…公式には1年2カ月ぶりですけど、確か、昨年末のカウントダウンライヴで何曲かやってて。
山中:
うん、真鍋くん(ギターの真鍋吉明)と会ったのは、それ以来――今言われた、大みそかのピロウズ恒例のカウントダウンライブ以来でした。
まあ、もともと、昔ながらの友達って感じの間柄でもないからね(笑)。
で、シンイチロウくんとは逆にしょっちゅう会ってたので…(彼がメンバーの)ピーズも見に行くし、シンイチロウくん(ドラムの佐藤シンイチロウ)も僕のソロのライヴを見に来たりしてたし、あと、あるバンドのライヴを見に行き、そこでたまたま会ったりとかしていたから、ホント、人間関係的には、何にも感慨はなくて。「…もうちょっとあるのかな?」とか思ってたんだけど、ホント、何にもなかった(笑)。
…正直、半年とか1年くらいじゃダメなんでしょうね。これが3年くらい間を開けたとしたら、またちょっと違うんでしょうが。
笹川:
じゃあ、とりあえずピロウズとしては、ドラマチックな感慨もなく(笑)、無事に再始動したと。
ただ、メンバーのピロウズの音楽に向かう情熱に警笛を鳴らしたその部分は、ちゃんと以前の状態に戻っていたのか、気になるんですけれども?
山中:
うん、そこはもう、ここ最近とは全く変わってました。
まあ…「理想通りの正解を持ってやってきた」って感じですかね。だから、“情熱があるぞ!!”的なアピールも特にないし。音楽じゃない、発言とかでやる気を見せたりすることもあるじゃないですか?
そういう表面上のアピールでもなく…人間的なコミュニケーション面で言うと、本当に何もなかったかのような感じのテンションで、スタジオにいて。
ただ、具体的なアイデアを詰めていくプロセスというのは、結果、今までとはすごく違いましたね。
「こんなのどう?」「うーん…」「だったら、これは?」って感じで、アイデアがいっぱい出てきてましたよ。メンバーに妙な鼻息の荒さもなかったけれども、やるべきことはそれぞれちゃんとやってくれてるっていう。
だから…うん、きっと変わろうとはしてたな、って思う。
そのおかげで、例えば今回のシングル2曲目の『都会のアリス』、あの曲とかは、ギター・ソロがそういう過程を経て、より良いものに仕上がったし、そこからベースも、もともとあったラインからすごくカッコいいものに変わっていったので――。
笹川:
すっごい遊び心のあるベースだよね。
山中:
そうそう。その辺は、もともと僕の頭にあったものではなく、バンド内で具体的なアイデアを詰めていく中で変化していった例ですね。
笹川:
その話を聞いただけでも、バンド内に対して“破壊的イノベーション”をやった甲斐があったんだなと。
で、タイトル曲の『ハッピー・バースデー』。ピロウズの結成記念日である9月16日にリリースすることも含め、これはピロウズのことを歌った“バンドソング”と受け取れそうな歌詞なんですが――。
山中:
まあ、そうなりますかね。実は、スタートは違ったんですけど。
笹川:
うん? 最初からバンドソングを書こうとしたんじゃないの?
山中:
ええ。この曲、もともとは『破壊的イノベーション』に入れるつもりで書いたものなんですね。
で、当時は、とにかくたくさん曲が――それもシングルのA面的な曲ばっかりできていたんです。で、この曲も入れる満々だったんですが…、制作途中で気づいたんです、ピロウズが復活するときは、結成25周年目に突入するアニバーサリー・タイミングだよなと。
で、その寸前に、僕のソロアルバムで『ハッピー・バースデー』なんて曲を出すのは、さすがにそれはないだろう、と思ってね(笑)。で、とっておこうとしたのが、この曲で。
笹川:
つまり、その段階で既に、この曲調と、『ハッピー・バースデー』というタイトルがあったっていうことですね?
山中:
うん、あの時点でもう9割完成してましたよ。歌詞も含め。
…でね、さらに言うと、もともとこの歌は、「自殺未遂を繰り返す人の心情って、どういうものなんだろう?」ってところが発想の出発点だったんです。
本当に自殺してしまう人ではなくて、死なない程度にリストカットを繰り返す人とか、ああいう人はどういう気持ちなんだろうって。…で、僕も正直、『トライアル』(12年1月にリリースしたピロウズのアルバム)を作る頃とか、心がすごく疲れていたことがあったし…
そして、バンドの活動休止に至るまでの絶望感も僕なりにあって。
そういうところをバンドに置き換えると、要するにピロウズの活動休止って自殺未遂みたいなもので――自分自身も巻き添えにしないと訴えられないという、僕にとっては最後の訴える手段だったと言うか。
だって、ピロウズを止めるってことは自分も止まるってことなので――ピロウズを終わらせるってことは自分の人生も終わらせることであり、それも承知の上で、たとえ未遂でも、みずから動きを止めて価値を訴えたいという…、まあ、それってすごく悲しい発想じゃないですか?
最終手段をちらつかせないとその価値を分かってもらえないっていうのは。
そういう心情もあったし…で、具体的に自殺未遂を繰り返す人たちってどんな気持ちなんだろうな、っていう。
でも、そこで僕が感じたのは、年間に何万人も(自殺で)死んでいますけど、本人の中で「ダメだ…人生で今が一番苦しい」ってことを感じつつ、そこまで行って自殺しない人って、実は本当に死んでしまう人の何倍もいるなと。そこで本当に死んでしまう人は、きっと心の病気になって、正常じゃない状態でそうなると思うんですよ。 あと、我々の想像を超えたような状況とか。
で、僕はそこまでの本当の奥底を知りたいんではなく、もっと日常的にある、「もうダメだ…今が人生で一番つらい」っていう絶望の中でも、「もう消えてしまいたいな…」とか思っても実際には死なないっていう、その動物の心理とは何なんだろうと。そういうテーマで作った曲なんですね。
だって、実際、ある意味、「もう、いいや!」と思ってた自分も、こうして死なないで生きているわけだし――。
笹川:
この『ハッピー・バースデー』の歌詞の中でも、「深層心理は何を願うだろう もういいやって立ち止まった足は動く」と歌われるように、実際は知らないうちに自分が動き始めているんですよね。
山中:
そうですね。 そういう深層心理みたいなところを思うと…何か、これはもう、「死んでもいいんじゃないかな…とか思っても、結局、死ななかったよね」っていう、ある種イヤミの言葉が『ハッピー・バースデー』だったのかなと。 強烈な皮肉と言うか。
笹川:
でも、たとえ深層心理の中だとしても、「もういいや」と思っても足は動いたわけで――それは、我々ファンにとって喜ぶべきことだと思うわけですよ。
結果、こうしてピロウズがまた動き出したわけだし。…まあ、そういう今のバンドにつながるフレーズとして「続きが見たいな もう少し見たいな」という言葉が入っていると受け取れますし。
山中:
いや、バンドにつなげたのはね、「100パーセントの純度を誇示した 今濁っていても飲み干してみせる」――そこのフレーズだけ後から付け足したものなんです。
他は、普通に、バンドじゃなく…何と言うか…。
あのね、その「続きが見たいな もう少し見たいな」ってフレーズに関して言うなら、どんなに絶望していても、僕の場合は、どこかで「やっぱり、明日は変わるかもしれない――変わる可能性がゼロではないよな」っていう、そこの好奇心が勝っちゃうんですよ。
どんなに退屈していても、つまんなくても、本当に神がかった答えを…そこには、俺の知らない何かが絶対あるわけで、それをどうしても見たいって言うか。
だから…やっぱり、まだ続きが見たいんだよなぁ。たとえどんなにダメな状況でも。
ちなみに今は僕、ダメな状況では全くないんですけれども、でも「いつも俺、最後はそう思うよな」っていう気がしますね。
笹川:
なるほどね。で、この『ハッピー・バースデー』は、いかにもピロウズらしい、力強いギターロック・サウンドになってますもんね?
山中:
そうそうそう。まあ、ピロウズでやるならこうなるよ、っていうことです(笑)。