the pillows 「REBROADCAST TOUR」のファイナル、2019年3月17日(日)Zepp Tokyo公演を観た。
すでに予感はあった。“ただならぬファイナルを迎える”という予感。
それは2018年9月、“Thank you, my highlight”と銘打った30周年記念シリーズの第一弾としてアルバム『REBROADCAST』がリリースされる頃から。山中さわおさん自ら「ロックバンドというのはシンプルなもので、レコーディングしてツアーを回る、ひたすらこれの繰り返しです」と言っているのに。その予感の兆しは例えば、アルバムのインタビューでさわおさんが「大きな花火を打ち上げるという意味においては、バンドっていうのは30周年が最後。だからリアルに終わる前にちゃんとバンド人生の物語とそれに携わった人への感謝を大きい声で歌っておきたい」と語ったとき。同じくツアーへの意気込みを尋ねたら「the pillowsの集大成をみせつけたい気持ちはあるかな」と呟いたとき。
さわおさんがpeeちゃん(真鍋吉明)にツアー中限定で、Twitterで情報発信することを勧めたとき。「COUNTDOWN BUMP SHOW!! 2018→2019」のステージ上から、アニバーサリーライブを2019年10月17日(木)に横浜アリーナで開催すること、劇場用映画「王様になれ」を制作し2019年に公開することを発表したとき。“ただならぬ予感”は現実になった。受け止めきれないほどの感動が心の奥底に押し寄せたファイナルだった。
2018年11月23日(金)長野からスタートしたツアーは全国27公演。ファイナルのZepp Tokyoは、チケットは売り切れ、当日券も発売されないことが公演2日前に発表された。BUSTERSがこのステージに賭ける熱気と想いは、場内に満ち溢れていた。
オープニングの3曲、蜂の巣をつついたような熱狂ぶりでthe pillowsの登場を出迎えるBUSTERS。最初のMCで「東京、久しぶりじゃないか! 来たな、ニンゲンドモ! お金を払ってオジサンたちに会いに来るおかしなニンゲンドモ。オレたちついに全員50代になってしまいました。どうかしてるよ、みんな」と、昨年末に50歳の誕生日を迎えた自身を踏まえて笑いを誘うさわおさん。そして「今夜オレたちは孤独じゃない、仲良くしよう!」と一瞬でBUSTERSの気持ちをわしづかみにする。セットリストは『REBROADCAST』収録曲全てに加えて、アニメ「フリクリ オルタナ」「フリクリ プログレ」2作品に書き下ろされ、2018年7月に開催された7年ぶりのアメリカ・ツアーが絶大な歓迎ぶりで迎えられる起爆剤となった「Spiky Seeds」、「Star overhead」の2曲も披露された。全国各地のBUSTERSがステージに懸ける想いを誠実に受け止め満足させるツアーを重ねることで、真鍋吉明さん(g)、佐藤シンイチロウさん(ds)、サポートの有江嘉典さん(b)のアンサンブルも抜群のグルーヴを醸し出す。「カッコよくラブソングを歌いたいと思います」とさわおさんが前置きして披露されたのは、映画「純平、考え直せ」の主題歌「眩しい闇のメロディー」。続いてインスト曲「MARCH OF THE GOD」ではさわおさんとpeeちゃんのツイン・ギターに合わせてミラーボールが華やかに煌めいた。自由と王国を手に入れた王様の孤独を描いた「プライベートキングダム」のエンディングではさわおさんの絶叫が胸を締め付ける。
メンバー紹介でシンちゃん(佐藤シンイチロウ)は、名古屋でpeeちゃんにうな重をご馳走になったことを紹介。それを受けてpeeちゃんはツアー中、好き嫌いを減らそうと“うなぎ克服”にチャレンジしたことを告白。「自分をアップデートできて、今までとはちょっと違うぜ」と嬉しそうだ。アルバムでも最後に収録の「Before going to bed」では、さわおさんがギターを置きハンドマイクで、英語詞ながら出会ってきた人たちへの感謝の気持ちを紡ぐパフォーマンスが秀逸だった。“Thank you very much, I like BUSTERS!”とシャウトして本編を締めた。
アンコールに登場したさわおさんは「今日はライブ全てが終了したらアニバーサリー映画のライブシーンの撮影に突入するので、興味あるヤツは残ってくれよ!」とスペシャルな呼びかけ。続いて「良かった! オレたち、いいツアーができてよかった、イエーイ!」とツアーを完走できたことがなにより嬉しい様子。少し改まって「『REBROADCAST』はリアクションという意味ではとても強いアルバムだった。もしかしたら皆の望むthe pillowsはこういうサウンドを演って欲しいんだとか、山中さわおにはこういう歌詞の世界を歌って欲しいっていうのが一致したアルバムだったのかなって思った」と総括。「だがしかし!」。ここからがさわおさんの真骨頂だ。「次もそういうアルバム作ったらきっと皆が喜ぶだろうと…!? オレがやる訳ないだろう!オレは自分勝手にやっていくよ」と宣言。自分たちのやり方を貫いて辿り着いた現在地に誇りを持っていることを示した。そしてここから語られたMCには泣けた。「だけど同じようなことで頭にきたり笑ったりする人間が集まってきているので、気分が合う瞬間が何度もあるじゃないか。普段なかなか見せないような心の奥の大切な部分の扉がスッと開くような瞬間があって。ここにはロックンロールの魔法が働いて、日常では感じ取ることのない大切な部分を一瞬チラッと垣間見せ合う。それは特別なものだとオレは感じてるし、曲を作った人間としてはとても幸せな瞬間だ。今年アニバーサリーだから言っておこう。オレの音楽に意味があったと感じることができたよ、ありがとう」。いつまでもいつまでも鳴り止むことがない拍手と歓声。それはたぶん、BUSTERSもさわおさんと同じことを感じて、ステージに投げ返し続けたことがthe pillowsにきちんと届いたことが確かめられた嬉しさだったんじゃないか。想像だけどそう思う。“意味がある”ことを確認し合えたツアー、たまらなく感動と充実感が満ちていた。僕の“ただならぬ予感”は現実になった。
ダブルアンコールに応えて登場し「今日はこのあと撮影があるから、珍しくノンアルコール。シンちゃんはちゃんとハイボール(笑)」。いつもはビールを片手に乾杯するコーナーでも映画に懸ける想いがそうさせるようだ。「アニバーサリーというとドキュメンタリーのフィルムを作るのが普通だと思うんだが、他のバンドがやってないことをやってみたいという欲があった。そして後世にthe pillowsってどんなバンドだったのかっていうのを残すのに、CDとライブ映像はあるとして、そうではない側面を知ってもらいたいということで、主人公はthe pillowsを好きな男の子という設定なんだ。どういう人たちに愛されたバンドだったのかという側面を残したいと思ったんだ」と、映画の主役がBUSTERSであることを告白した。
「1989年、札幌の真鍋くんのアパートでthe pillowsというバンド名は誕生した。その頃に流行っていた音楽とかファッション、今はもちろん流行っていない。というか、今、何が流行っているのかオレはよくわからん。でもオレにも把握してることがあって、オレたちthe pillowsが今流行りの音楽ではないということはわかっている。でもキミたちはそれが好きなんだろ? 新しいも古いもない世界、それがロックンロールだ!」と叫んで「Locomotion,more! more!」へ傾れ込む。長いツアーはとびきりのロックンロールで軽快に幕を閉じた。
最後に、ツアー内容とは異なることだけど書かせて下さい。ライブ終了後に行われた映画の撮影で、登場した助監督の要望に、驚くほどのクオリティで応えたBUSTERSの姿のことを。それはthe pillowsが作りたいと決めた作品を少しでも良いものにしてあげたいという想い、そしてドキュメンタリーではなくBUSTERSを題材にしてくれたことへの感謝の気持ちにみえた。“ひたすら繰り返し”であるはずのツアーだが、いつにも増してthe pillowsとBUSTERSの絆が尊く愛おしく思えた。ステキな夜だった。
取材、文:浅野保志(ぴあ)
写真:岩佐篤樹
前売 ¥4,320(税込)※ドリンク代別
当日¥4,860(税込)※ドリンク代別
一般発売:2018年10月14日(日)
2018年11月23日(金・祝)〜2019年01月27日(日)公演分
一般発売:2018年12月16日(日)
2019年02月01日(金)〜2019年03月17日(日)公演分
11月23日(金・祝)
11月25日(日)
11月30日(金)
12月02日(日)
12月08日(土)
12月23日(日)
01月20日(日)
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