山中さわお 2015 New Year Interview
──9月16日改め10月4日にアニバーサリー・ライブ「DON’T FORGET TODAY!」がありました。あの時演奏された曲は、さわおさんとしてはどんな気持ちで臨まれたのですか。
絶対に演りたい曲、絶対にみんなが聴きたいと思ってる曲ってある訳じゃないですか。「ハイブリッド レインボウ」とか「ストレンジ カメレオン」とか「Funny Bunny」とか。それはもちろん演る訳じゃないですか。残りの曲も自信作が膨大にあってきりが無いので、アニバーサリーということで(20周年のとき開催した)武道館で何を演ったのかなって振り返って、被らないでいけるのならできるだけ20周年と25周年、違う曲を演ろうと。アニバーサリー同士で武道館と差別化を図ろうとしました。
あとは僕、いつも1曲目にこだわるんです。20周年のときは1曲目「Thank you,my twilight」で、初めて武道館に立って最初に“Life is beautiful~”って大きい声で言いたいなというのがありました。今回は何かなって思ったときに、アニバーサリーというのと活動再開という気分がどっちもあったので「スケアクロウ」を。あれはバンド・ソングなので。“もう一度行こうぜ”という気分を1曲目に演りたかった。
──第一期、第二期、そしてトリビュート・アルバムのツアーと続いて、実はあれだけ自分たちの曲をまとめて届けたライブは希少だったと思うんですが、10月4日公演で印象に残っていることはありますか。
いつもね、緊張しちゃうんだよね、アニバーサリー・ライブは。武道館も、こないだのTOKYO DOME CITY HALLも。それが嫌なんだよね(笑)。オレ普段はほとんどのことに緊張しないタイプなので。緊張する自分を知りたくないからね。
緊張していたから、どう思ってたかな。曲の印象で言うと、なぜか「日々のうた」を歌ってるときにすごく心が熱くなったのは覚えてます。あとは、アンコール終わってかな、ひとりステージに残って挨拶をしてるときに、鳴り止まない拍手があり、そのときに静かに感動していたかな。“ここでこういうMCしよう”というのを自分でなんとなく、先に準備するんですよ。こういうことを伝えてこの曲に行こうとか。でもアンコールの終わりだけ、何もノープランで普通にいくんだけど、そこで意外と素の感じでしゃべったんだよね。今年1年のことを“いいアニバーサリーだった”みたいな。心の中の台本みたいのがない場所で、だから何かそこで伝わったのかもね。そこで自分の想像以上の拍手が来てちょっとジーンとしてた。その印象が一番大きいかな。
──そしてニュー・アルバム『ムーンダスト』がリリースされて、また新たなthe pillowsが始まりました。『ムーンダスト』の制作状況を教えていただけますか。
とにかく「ムーンダスト」、「ハッピー・バースデー」、「プレイリー・ライダー」がすごい前にあって、『破壊的イノベーション』作ってるときにあったんです。その他の曲は、去年の今頃から年明けてから作っていったのかな。去年の今頃は「LOSTMAN」のツアーをやってて、そのときに「About A Rock’n’ Roll Band」を演っていたから、そのくらいから2~3ヶ月かけて作ったのかな。
「Song for you」だけ断トツ古いんですよ。曲順を考えて、「アネモネ」から「メッセージ」の間に繋ぐべく曲が必要だと思い、作ろうと思ったんだけど“いいのがあったんだ”と思い出して。デモがMDで残ってたので相当前だと思う。歌詞は今年書いて。英詞だけれども「アネモネ」から繋がる、ふたつでセットみたいになったらいいかなと思って書いた。新しい曲と古い曲が混在してる。the pillowsは割といつもそうなんだけど。
──水戸ライトハウスを皮切りにツアーも始まりましたがどんな手ごたえですか。
とりあえず楽しいね(笑)。ロックンロール・アルバムなので、当然旧譜で足していく曲もロックンロールになっていくので楽しい。(前作の)『トライアル』のツアーとはちょっと違うよね、音楽的な意味で。
「トライアル」はメンバーの関係性上楽しく回ったんだ。活動休止を決めてスッキリして。このツアー終わったら休もうって感じで。メンバーそれぞれが“もっといろいろ良くしよう”と心に秘めて一緒にツアーを回ってたのでよかったんだけど、なにせ「トライアル」は曲が暗いので、どうしてもそれを本気で歌うと気持ちは引っ張られる訳じゃない。音楽に集中して自分の思ったクオリティに達すると楽しい。だけど歌詞には感情があるからそれに引っ張られる部分があるけど、そっちの楽しさと違って、今回は顔が笑っちゃうっていう楽しさ。ここにきてオレ的には真鍋くんのギターの音がかなり急カーブで良くなったのでそれが嬉しいのと歌いやすい。
とにかく“音楽に対するモチベーションが明らかに足りてない、それでは困る”ということで活動休止をした訳なんですけど、“音楽に情熱があるオレは反省すべき点は1ミリもない”と思ってたけど、“神経質すぎるところがあるかな”ってちょっとは反省して。いろいろ疲れてしまったのかな、神経が張り詰め続けるのは。だから楽しくやりたいなって。どうせやっていくのであれば、“あの頃はよかった、あの頃に戻ろう”というだけじゃなくて、年を重ねて多少の変化が起きて、その現状を受け入れて。それでもバンドを続けるのであれば、今の“年を取ったオレたち”でやっていく方法を見つけなきゃと思ってるのかな。それが楽しい方向に行きたいのかな。まあでもちょうどいいのかも知れない。活動休止したことによって、引き締まる部分があって、逆にオレの方が少し力が抜けて、そのくらいでようやく3人のバランスがいい。オレだけが神経質で、ふたりが極端に適当な感じだとさ、あんまりthe pillowsはうまくいかない。元々はふたりの方が音楽の能力が高くて、オレだけがソングライター以外のことはすごい低くて、ふたりは先輩だし。そこに頼ってオレが“適当にふざけてやってるよ”というのが、やっぱりよかったと思うんだよね。ちょっと変わっちゃったんだ、ここ10年くらいは。そっちじゃない方がthe pillowsは魅力を発するのかもね。みんながちゃんとした演奏をして、オレが適当にふざけてるっていう方がいいんじゃないかな。だから今、とってもいいんじゃないかな。
インタビュー/文:浅野保志(ぴあ)